「角松敏生 Collection 13」



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2005年10月14日号
角松敏生さんインタビュー Vol.1
角松敏生さん[new]来たる10月26日、ニューアルバム「THE PAST & THEN」をリリースする角松敏生さんがギターラボに登場! 来年でデビュー25周年(四半世紀!)を迎える角松さん。アルバムのお話、ライブのお話。もちろんギターのお話もうかがったインタビューの第1弾です!



愛用のオリジナルギターを手にする角松敏生さん企画ものだけど、手をかけずにはいられなくて

■10月26日にリリースされるニューアルバム「THE PAST & THEN」がリリースされますが、前作「Fankacoustics」のElastic Side(ドラムレスバージョン)のような音作りですね。

あれの延長線上ですね。このアルバム自体が、通常のオリジナルアルバムという位置付けのものではなく、「企画もの」なんですね。枚数契約なもので(笑)、オリジナルアルバム以外に、企画ものを出すという決まりになっていまして(笑)。
普通だとそこでバラードのコンピとか、寄せ集め的なものを作ってお茶を濁すんですが、僕はそういう「ベストもの」みたいなものが嫌いなんですよ。やるんだったら手を加えたもののほうがいい。 かといって、フルオリジナルアルバムを作るようには、制作費もかけられない。時間がかからずクオリティーが高いものを作れないだろうかと……。

画像:愛用のオリジナルギターを手にする角松敏生さん




で、(去年から今年にかけて)今おっしゃった前作の、Elastic Side(ドラムレスバージョン)のツアーがあったんですよ。そこでアルバムの曲以外、80年代から90年代の……、角松敏生は一度93年に活動凍結をしましたが、それ以前の懐かしいナンバーを、ベース、ギター、ピアノ、パーカッションという編成でやる、というコーナーがあったんです。
リアレンジという意味もあるし、昔の曲のよさを掘り起こすという作業にもなったので、すごく有意義だったし。そのコーナーがことのほか評判がよかったんです。昔からのファンの方々もいらっしゃいますし、やってる僕らも楽しかったし。
リアレンジという作業で、いろいろと発見もあったので、「じゃあ、これを記録しよう」ということにしました。ライブツアーをさんざんやっていたミュージシャンが集まったら、そのときのテンションで演奏できるし、旧譜のセルフカバーということになれば、企画ものにはぴったりだなと、ツアー中に思いついたんです。

同時に、たとえばギター1本と歌でも、ピアノと歌でも、どんな編成でやっても「角松敏生たること」って大切だなって思ったんですね。
僕なんかどちらかというと「にぎやかに楽器を配する」、というスタイルでずっとやってきたんですけど、ある種それをそぎ落としていくということに、非常に魅力を感じていたという理由もあるんです。いわゆるドラム、ギター、ベース、ピアノという4リズムコンボ以外の編成で、さっきのライブでのドラムレスコンボのほかに、鍵盤3人(笑)というセッションを考えていたんですよ。
その話を、ツアーに参加してくれたミュージシャンたちに話したら、「それはおもしろい」って言ってくれて……。それで実現した、小林信吾、友成好宏、森俊之という3人のキーボード奏者のセッションを軸とした新曲を、さらにそのアルバムに入れたんです。それで新旧5曲ずつ。
最近のファンにも、昔からのファンにも喜んでいただけるし、まあ来年のオリジナルアルバムへのブリッジとしては、いい企画になるんじゃないかなという発想で、このアルバムは作られたという感じですね。

■基本的にはあくまでも企画もの、という位置付けなんですね。

そう、限りなくオリジナルに近い企画ものなんです。だから「来年はどういうふうになるかは、わかりませんよ」、ということですね(笑)。

■これを聴いて、次に出るオリジナルアルバムはこういう感じになるのかな? ともいえない、という含みを持たせていますね(笑)。

まあ、でも今回ドラムレスだったり、キーボード3人、あるいは森君との出会いとか。いろんなファクターがありますから、それが次の作品に影響してくるということは、なくはないとは思いますけどね。具体的に、今どうこうとはいえないですけど。




やっと自分の歌に自信が持てた

■さきほどのお話で、このアルバムがこうなった理由がわかったんですが。ぼくは打ち込みをはじめ、かなりほかに先んじてリズムにこだわってきた角松さんが、そこをあえてしなかった。
で、ドラムレスのギター、ピアノ、ベース、パーカッションでリズムを作ったことで、新しいグルーブが生まれた。そうすることでいっそうボーカルが際立ったなって感じたんです。それは「シンガーソングライター・角松敏生としての原点に帰ったということなのかな」、「歌を聴かせるという部分に力点をおいたのかな」なんて深読みをしていたんですが……。

ああ、そういうのもあるかもしれませんね。さっきも言いましたが、どんなスタイルであれ、角松敏生たることの重要性っていうのは、「原点」というよりは、今やっとそれができるようになった、ということでなんです(笑)。
80年代に、とっても華麗な(笑)アレンジと、いろんな楽器がバアーっと聞こえる音楽だったものが、今度はそこからそぎ落とすことに魅力を感じるようになったというのは、40(歳) を過ぎてやっと、自分の作る楽曲の本来持っている魅力とか、あるいは自分のボーカルというものに自信が持てるようになったから、なんじゃないでしょうかね。だから歌がバーンって際立っていても、恥ずかしくなくなった。

そう言うと、みなさん意外に思われるんですけど。ずっと僕はそういうコンプレックスを持ってきたので、自分の昔の歌なんか聴きたくないんです。そういうことを言うアーティストがあまりに少ないので、びっくりしてしまうんだけど。意外とみんな、昔から自信持ってやっているんだなあって。僕は、恥ずかしくて自分の昔の歌は聴けませんからね(笑)。
逆にリアレンジ、リカバーしたいくらいなものばっかりですよ。だからそういう意味では今回のアルバムで、1曲目(RAIN MAN)をピアノと歌だけで始めることができたっていうのは、ある意味、今の自分に対する自信というか、やっと歌が上手に歌えるようになったという気持ちの表れかもしれませんよね。
でも、そう思ったら後先短いかもしれないみたいなさ(笑)。もうこんなに歳をとってしまった、どうしよ? みたいな。

(一同笑)

画像下:角松敏生さんオフィシャル画像(提供:BMG JAPAN)




角松敏生さんオフィシャル画像(提供:BMGファンハウス)



解凍後の角松を聴いてほしい

今の(やっと歌がうまくなったかなという)話は、活動を再開してからけっこうあちこちで言っているんですよ。凍結以前は、後半になればなるほど釈然とする曲は多いんですが、「あそこをこうしたいああしたい」っていう気持ちが、昔にさかのぼればさかのぼるほど強くなるんです。
まあ、でもこういう考えは普通でしょうね。その当時は、そのときできることを最大限にやっていたので否定はしませんけどね。でも、今の自分からみると「ああ、だめだな」って思ってしまう。解凍してからの自分の作品は、「やり直ししなくてもOK」みたいな、納得した作品ばかりなので、できれば解凍してからの作品をみんなに聴いてもらいたいなって思っています。
まあ、もちろん歴史として(凍結以前の作品を)聴くのはいいかもしれないけど、「本来僕はこうありたかった、という角松敏生がそこにいる」というのが、解凍後のこの7年間なんです。その7年間のあいだにも進化しているから……。
人としての生活は、まったく充実していないんですけど(笑)。音楽的にはけっこう充実しているな、っていう思いはありますからね。




新曲のアコギは全部ぼくです

■アルバムのタイトルもあまり大きな意味を込めたものではなく……。

レコード会社に「わかりやすいほうがいいですね」って言われたんで、「THE PAST & THEN」という「過去とこれから」、ということでいいんじゃないかと。もうひとつ言えるのは、自分に自信が持てたということと、過去の作品は今に生かせる、ということ。
80年代によく、「とっても早いことをやってる」って言われてきて、僕もその意味がよくわからなかったんだけど、今回セルフカバーしてみて今でも通用する曲があるっていうことは、「そういうことだったのか」って思うんです。
作品は、新旧新旧っていう並びで収録しているんですが、何も知らない人が聴いたときに、その旧の曲が古く聞こえないようにする、ということがとっても重要なことなので、あえてそういう配置にしたんです。そこもぼくの課題であり、この作品のおもしろさでもあるし。そういった意味で「THE PAST & THEN」といったタイトルが生きてくるんじゃないかな、って思うんですよ。

■わたしのように過去から聴いてきた人間にとっても、そういう新旧のでこぼこ感がなく、一本芯(しん)が通った作品に聞こえましたね。

それはなによりです(笑)。

■試聴盤を聴かせていただいた段階ではパーソネルがわからなかったんですが、今回エレキギターは入っていませんよね?

エレキは入っていないですね。

■角松さんご自身も、かなりの部分でアコースティックギターを弾いていらっしゃるんですか?

うんと、「THEN(新曲)」の部分は、全部ぼくがアコースティックギターを弾いていますね。




角松敏生さん映画は聖域、簡単に手は出せません

■同時発売で映画音楽のサウンドトラック盤「ミラクルバナナ」もリリースされますが、錦織(良成)監督とは「白い船」に続いて2作目ですよね?

そうですね。前作ですごく信用していただけたので、「次作もぜひ」ということで実現しましたね。

■角松さんご自身はかつて役者として、下北沢の本多劇場で舞台に立たれたりとかされてきましたけど……。


あ、よくご存じですねえ(笑)。

■はい(笑)。ところで、ご自身で映像作品を撮ってみたい、というお考えはないですか?

ありますよ。まあ、でもこれは夢の部類です。だから自分のお金の持ち出しで作るほど、度胸はありません。そういう機会があったら、ということですよね。
「監督は自分で(映画)制作費を持ち出してはいけません」って言う制作の方がいて、その人も「本(脚本)ありきだ」って言うんです。僕も映画を作るというより、自分が作るストーリーというものを書きためてみたいな、って思うんですよ。で、「あ、これおもしろいですね。撮ってみましょうか?」っていう健全な流れが必要だと思うんです。
こうやって、映画の裏方の仕事をさせていただいているので、いかに大変かとかわかるし。僕は「簡単にミュージシャンがメガホンとるものじゃない」、って考え方なんです(笑)。映画は聖域なので、簡単に手を出しちゃいけないって。だから映画音楽をやるときには、ものすごく緊張したし。角松敏生ということじゃなくて、映画音楽作家にならなきゃいけないっていう、常にそういう視点で書いているつもりです。エンディングテーマとかは別ですけどね。
人様が作ったものに色を加えるという作業が、自分というものを見せる作業より好きだったりする部分もあるし。「さらによくなりました」って言われるのがうれしいんです(笑)。映画っていうのは、そういう立場で考えていかなきゃいけないので、おいそれと「自分が撮りたい」、とは思いませんね。

■じゃあ、それは夢のひとつということで……。

もちろんもちろん。でもね、いろいろジタバタしているのを見てるとさ、「僕だったらこうするのにな……」とか思ってしまう。

(一同爆笑)

今回の映画のエンディングテーマの「Smile」のPVは、僕が監督しているんです。過去にも自分の曲のプロモーションビデオは、何曲か監督をしています。

■じゃあ映像を撮る事に関しては……。

そのノウハウは持っています。凍結している期間中に、相当勉強しました。プライベートスタジオにノンリニア(映像)編集システムもある。ですから、映像制作はできるんです。だから、ほかの監督さんはやりにくそうなんですね。ほかのミュージシャンが指摘しないところを指摘するし(笑)。「この程度のノイズ、一般の人には見えませんけどね」、「いや、見えますよ」みたいな感じで……。

(一同笑)

画像:愛用のテイラーのアコースティックギターと、角松敏生さん




愛用のテイラーのアコースティックギターと、角松敏生さん



2バージョン、2メニューのライブを

■やりにくいですね(笑)。ところで、アルバムリリース後にはライブが待っているんですよね?

そうですね。今回はアルバムの発売記念ライブなので、前回の「Fankacoustics」ツアーみたいに、2バージョン、2メニューで、せっかくだからパフォーマンスします。リハーサルはちょっと大変ですけどね。
「PAST(旧)」のほう、「The Elastics」って呼んでいるんですけど、これが愛知(11月26日稲沢市民会館)と、(中野)サンプラザの12月2日の2公演。

これはさきほどお話した、前回のツアーでやった昔の曲をリアレンジした楽曲の集大成みたいなライヴ。前回のツアーは全都道府県を回ったので、その旧譜コーナーは「できるだけ違う曲をやろう」と思って、レパートリーを増やしていったら、30曲くらいになったんですよ。それで「そのコーナーだけでライブが1本できるね」っていう話になったんです。

いっぽうの「THEN(新曲)」のほうなんですが、これはキーボード3人でやるので、僕は「Tripod」って名付けたんですけど、こっちは新曲が5曲しかないじゃないですか、ね?

(一同笑)

ですから、この「Tripod」セッションでも角松敏生の旧譜をリアレンジしたものを演奏するので、これはこれで一期一会的なライヴになるんじゃないかなと思います。
このセッションには、小林信吾、友成好宏、森俊之の3人に加えて、パーカッションの田中倫明と大儀見元、ゲストでベースの松原秀樹が入ってきて、ギターは今剛さんが入るんですが、ちょっとこれは「おもしろそうだな」って。自分で「おもしろそうだな」って言うのもどうかと思いますけど。

(一同笑)

おもしろいライブになると思います。まだ、やる曲とかまだ全部決めていないんです。これからそれ用のアレンジをしなくちゃいけないので、 11月はすごく大変なんですけどね。
「The Elastics」はパンっと集まって、同窓会的なノリでステージができちゃうからいいんだけど、「Tripod」は作りこまなきゃいけないから大変なんです。でもその分、楽しみかなって思っています。

---早いもので来年でデビュー25周年になる角松さん。その音に対するこだわり方は、以前とちっとも変わっていません。それにしても若い! とても○○歳には見えませんね。さあ、次回からはギターのお話が登場しますよ。どうぞお楽しみに!




●撮影、文:Yahoo!オークション
●協力:株式会社ビーンズ ●協力:BMG JAPAN



「角松敏生/THE PAST & THEN」ジャケット画像THE PAST & THEN / 角松敏生

10月26日発売
DVD付き初回盤:3,675円(税込) BVCR-18054〜5
通常盤:3,059円(税込) BVCR-11076

■収録曲
01.RAIN MAN
02.飴色の街
03.リカー!!
04.Can't You See
05.氷の妖精
06.Maybe It's Love Affair
07.I'm Lovin' You
08.Lady In The Night
09.5000マイルのカウンター
10.I'd Like To Be Your Fantasy


*初回盤DVD収録:「Can't You See」、「Lady In The Night」(2005年3月の東京国際フォーラムでのライブ映像)、初回盤封入:「THE PAST&THEN」 ⇔「ミラクルバナナ」連動特典応募券
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